フィチン酸が気になる人必見!玄米を美味しく食べる方法
玄米について検索したり本を読んでいると、
- フィチン酸
- アブシジン酸
こういった成分を目にしたことはありませんか?
「玄米には毒素がある」
「玄米を食べるとお腹をこわす」
こうした時によく挙げられるのがこのフィチン酸とアブシジン酸です。
時にこれらの成分は人体に悪影響を及ぼすものだとして紹介されています。
しかしながら、フィチン酸・アブシシン酸は玄米に限らず、麦・大豆・オートミールなどの穀物やナッツ類にも含まれる植物特有の成分です。
どれもよく口にするものだから、どんな影響があるのかしっかり理解しておきたいですよね。
そこでこの記事では、これらの成分について論文等を用いて詳しく検証しました。
玄米に限らず、オートミールやナッツ類など植物性食品全般に役立つ知識ですので、ぜひ最後までお付き合いください!
▼▼▼この記事を書いた人▼▼▼
フィチン酸とは
フィチン酸はひと言でいうと、植物の栄養を保管する貯蔵庫の働きを持ちます。
フィチン酸にはキレート作用というミネラルを取りこむ力が強く、キレート作用により植物のエネルギー源となるリン酸を取りこんでおく機能が。
特に発芽の際にリン酸をたくさん消費するので、貯蔵に必要なフィチン酸も植物の種子にたくさん含まれています。
玄米には特にぬか部分に多く含まれているので、精米後の白米でフィチン酸の話題が上がらないのはこのためです。
玄米の他にはナッツ類・ごま・大豆など、やはり植物の種子に多く含まれます。
フィチン酸のメリット・デメリット
メリット:抗酸化作用が高く、アンチエイジングに効果がある
フィチン酸は高い抗酸化作用を持ち、活性酸素による体の酸化を防止する働きがあります。
そのためアンチエイジング効果が高く、くわえて血液中の血小板が固まるのを抑える血栓予防効果もある、とても有益な成分です。
抗酸化作用があり、食用油の酸化防止などに利用されています。細胞の酸化を防いで、ガン細胞の発生と増殖を抑える効果があります。また、血液が凝固しにくくなるため、血栓予防効果もあります
デメリット:キレート作用があり、鉄分の吸収を阻害する
フィチン酸でよく言われるのが、鉄分の吸収を阻害して、貧血を引き起こすというものです。
これは先述したキレート作用により、ミネラルである鉄分も吸収してしまう働きがあるためだといわれています。
鉄分の他にも、カルシウムやマグネシウムなどもミネラルの仲間ですので、フィチン酸のキレート作用によりミネラル欠乏症を引き起こす危険性があるとされていました。
近年のフィチン酸に対する研究結果
ただし、こういった指摘されていたのは今から50年以上前で、現在ではそのような危険性はないと結論づけられています↓
1967年には、中東での亜鉛欠乏症への注目から、フィチン酸がミネラルの吸収を妨げるとされてきたが、1980年代以降の知見から、バランスのとれた食事がとれている場合には、そのような悪影響の証拠は発見できない。
フィチン酸を過度に不安がる必要はない
フィチン酸の人体に対する影響についてもっと詳しく紹介します。
実は、フィチン酸の含有率はごま・大豆など玄米以外の種子のほうが多く、玄米の2倍以上含まれます。(詳しくはQ&Aにジャンプ)
なのにごまや大豆製品(豆腐や油揚げなど)の食べ過ぎで貧血になった、という事例は聞きませんよね。
フィチン酸は人の口に入る際には、すでにミネラルと結合したフィチンの状態ですので、キレート作用はありません。
そのためミネラル欠乏の心配はほぼなく、過度に恐れる必要はありません。
過度に恐れる必要はありませんが、フィチン酸の対処法はいくつかあります。
フィチン酸が多く含まれるナッツや豆類にも応用できますので、ぜひご参考ください↓
玄米のフィチン酸の対処法について
デメリットの心配はないとされているのでひと安心ですが、それでもやはり気になる方は気になりますよね。
そこでフィチン酸の影響をより軽減するなら、
- しっかり水に浸ける
- バランスのよい食事を心がける
この2点を押さえておきましょう。
フィチン酸の対処法①:しっかり水に浸ける
しっかり水に浸けると種子の中のフィターゼという酵素が働いて、フィチン酸を分解してくれます。
特にそばにはフィターゼが多く含まれますので、ナッツやオートミールにそばの実やそば粉を混ぜて食べるのもいいでしょう。
フィチン酸の対処法②:バランスのいい食事を心がける
バランスのよい食事を心がけることも対策として有効です。
フィチン酸は食事のミネラルや鉄分がすべて阻害されるわけではありません。
ビタミンCや発酵食などに多く含まれる有機酸がフィチン酸のミネラル吸収を抑制することもわかっています。
なので穀物といっしょに野菜・魚・発酵食などバランスのとれた食事を心がけると過度に恐れる必要はなくなります。
その他の気になる成分:アブシジン酸
アブシジン酸=発芽を抑制する植物ホルモン
フィチン酸と並んでよく指摘されるのがアブシジン酸です。
アブシシン酸は植物ホルモンの一種で、発芽を抑制する働きがあります。
玄米を含む種子は普段この因子によってむやみに発芽せず、適度な温度・湿度の環境になったら発芽するようにコントロールしています。
具体的には、アブシシン酸が植物の気孔(きこう:植物の呼吸・光合成に必要な穴)に活性酸素を活発にさせて、気孔の動きを抑制(※1)、このとき働く活性酸素が人体の細胞を傷つけるといわれています。
現在は「むしろ有益かも?」と注目されている
アブシジン酸は穀物やナッツなど多くの種子に含まれているので、その研究は国内外でも活発に行われています。
近年の研究では、「アブシジン酸ってむしろ有益なのでは?」とそれまでの常識が変わりつつあります。
近年では炎症を鎮める新薬としても研究(※2)が進んでいるほか、植物の成長を抑える働きから健康への悪影響がない農薬としても研究・利用が進められています。(※3)
アブシジン酸の対処法もフィチン酸とほぼ同様
アブシジン酸の対処法もフィチン酸とほぼ同様です。
- しっかり水に浸ける
- 発芽させる
アブシジン酸の対処法①:しっかり水に浸ける
アブシジン酸の対処法も、フィチン酸同様にしっかり水に浸けることです。
アブシジン酸は発芽抑制因子ですので、水を浸けて発芽に適した状態なら自然と減っていきます。
そのため、穀物やナッツはしっかり水に浸けて発芽に適した環境だと思わせてあげるとよいでしょう。
フィチン酸の対処法②:発芽させる
玄米であれば発芽した状態、いわゆる発芽玄米の状態でもおいしく食べることができます。
玄米なら発芽するまで浸水して発芽玄米にすることでアブシジン酸が1/3以下にまで減少するという研究結果も報告されています。
ほかにも、玄米を発芽させることで、
- GABAの増加
- 消化・吸収効率のアップ
- 食感が柔らかくなる
こうした効果が期待できるので、時間に余裕がある人は発芽玄米にチャレンジするのもおすすめです。
(発芽玄米に関するより詳しい内容はこちらもどうぞ↓)
【参考記事】発芽させるとどうなる?発芽玄米のメリットと酸っぱい匂いの対処法
玄米のフィチン酸によくあるQ&A
Q:フィチン酸は玄米にだけ多く含まれるの?
A:玄米のほかに、ごま・大豆・ナッツ・など種子類に広く含まれています。
フィチン酸は植物の種子の広く含まれ、大豆やごまには玄米の2倍以上のフィチン酸が含まれています。
そのためフィチン酸が本当に貧血の要因であるなら、ごまや大豆でもいわれるはずですよね?
でもそうした指摘が出ないのは、フィチン酸がキレート作用を失ったフィチンで口に入るからです。
はじめからミネラルと結合した状態で取りこまれるので、体内のミネラルを奪うような働きはそもそも持っていないといえます。
Q:かならず発芽させて食べた方がいい?
A:無理のない程度でOK。
あまり気にしすぎないようにしましょう。
発芽玄米にはGABAの増加・消化吸収効率のアップ・食感が柔らかくなるというメリットがあるのでおすすめですが、反面発芽までには2~3日の時間がかかります。
そのため毎日炊くご家庭では不便に感じることもあるでしょう。
先述したように、フィチン酸もアブシジン酸も過度に恐れる必要はなく、そのまま炊いても人体に影響はありません。
あまり気にしすぎず、無理のない範囲で続けることが重要です。
まとめ
玄米はたしかに調理方法にコツが必要で、フィチン酸やアブシシン酸など気になる成分も含まれます。
ですが、紹介してきたようにフィチン酸もアブシシン酸も悪影響なものではなく、むしろ有益な働きだってある成分だというのがお分かりいただけたのではないでしょうか。
フィチン酸・アブシシン酸が気になる方でも、しっかり水に浸けることで対処することが可能です。
この世に完璧な食材なんてありませんが、それでも豊富な栄養素に多量の食物繊維を含むので、玄米が優秀な食材であることは間違いありません。
玄米のネガティブな側面に惑わされず、日々楽しくおいしく玄米を取り入れるのにこの記事が役立てば嬉しいです!